2013/08/20 (Tue) 11:08
北海道近代美術館の夏の目玉展示であるシャガール展にいってきました。
お盆休みと重なったせいかものすごく人が多かったのです。
「自分にとって、製作することは祈ることだ」
シャガールはシャガールブルーと呼ばれる独特な青と、
パステル画のようなほわわんとした淡い作風くらいしか知りませんでした。
正直「有名だしいってみっかー！」なノリでした。
彼のバックグラウンドを思うとき
ずっとそれが作品に直結してると感じます。
戦争と、自分と、故郷。
今回の展示は終始旧約聖書がモチーフとなってるものばかりでした。
個人的に旧約聖書？
モーセの十戒でしょう？
海ぱかーん、のアレ。
ほかの話しらんけど。
これレベルの私にはよくわからないことばかりで
ずっとぽかーんという感じでした。
オペラ座の天井画、舞台衣装、
病院や協会などのステンドグラス、
陶芸や彫刻
具体的な偶像がなくても、それらからイメージしたものを表現してゆく。
その表現もその時々に変えて常にチャレンジを絶やさない。
そんな生きざまを見せられた展示でした。
そんな近代美術館と連動企画をしていたのは
宮の森美術館のイジス展。
シャガールの写真をとり続けた写真家の展示でした。
実は宮の森美術館。
名前こそ知ってはいましたがはじめて！
真っ白い建物の半分は予約制レストランとチャペルというもの。
すごく素敵なたてものです。
近代美術館の混雑とはうって変わり、人もほとんどおらずに静かでした。
一階は常設展示。
クリストとジャン＝クロード。
「アイデアを持つことはそれほど大変ではありません。
難しいのはそれを実現することなのです」
そういうふたりの代表作品は
包装するシリーズ。
最初は小さな瓶を包んでしまったことからはじまって
それはどんどん広がっていきます
建物を包み、海辺を包み。
島までも包んだその芸術は数年にも及びやっと製作されます。
各国の法律などに違反してないか
自然環境は大丈夫か、など様々なことをクリアしてやっと包める。
ある意味、それに関わる人々の心まで包み前に進んできたようです。
展示は写真と説明パネルと
リトグラフやコラージュもあって
実際の作品がイメージしやすいものとなっていました。
なかなか理解されにくい芸術作品とおもいます。
「私たちが作りたいのはジョイ（喜び）と
ビューティー（美）の芸術作品なのです」
そんな一階から階段をのぼって二階はイジス展。
おもしろいことに、ここには彼を示すものはありません。
一枚のパネルに彼の略歴があるだけ。
それ以外はすべてシャガール本人の写真だけです。
シャガール展の目玉でもあったオペラ座の天井壁画。
それは関係者以外シャットアウトで製作されたそうです。
当時はシャガールが壁画を担当したことに賛否両論あったそうです。
童話のような絵を描くからという理由で。
その壁画製作に没頭するシャガールをただ静かに切り取ってました。
シャガールとイジス。
彼らの関係のより良さがなければできなかった写真だったと
陳腐な言葉しかでてきません。
シャガール展でみたものを彼はかいている。
棒の先に絵筆をくくりつけ、巨大な絵向かってる。
そこに
時おり愛妻がやってきて微笑みを交わしたり
彼の誕生日に愛孫がやってきたり。
巨匠の前にただひとりのシャガールにふと戻った時のまなざしの優しさまで。
イジスはそこにいないような感覚になるほどの自然なそれでした。
「（略）私が写真を撮る人々に私は見えていない。
人は大抵いつも内面の世界、自分の中にいるものだから」
晩年自宅の庭にてくつろぐシャガールの写真がありました。
商店の女主人と話してる写真もありました。
どこにもイジスの空気はありませんでした。
ごく自然にわらう。
これがプロなんだなあとしみじみ感じました。
大事なものに囲まれてあたりまえに暮らしてわらう。
それを切り取るのは、簡単に見えてむずかしい。
巨匠の顔から素の顔に戻ったとき
イジスとどんな顔で言葉を交わしたのか。
その時のイジスの顔もみてみたかったと
ものすごく思ったのです。
これは近代美術館にいき
宮の森美術館をみて完成される美がつくられるまでの物語だと思いました。
静かにただ作るひとと
それを受け止めて撮るひとがいた。
ふたりがいたからこそできた展覧会という物語です。
両方みてはじめてわかったこと。
それらを体験できない、しないなんて勿体ない。
ぜひ期間中に両美術館へ行って欲しいです。
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